ペットちゃんの「後追い」……原因や飼い主がすべきケアを解説
複数のペットちゃんを飼っている場合、残念ですが必ず「先に旅立つペットちゃん」が出てきます。
私は長くペット火葬業に携わっていますが、不思議なのは、「1匹が旅立つと、もう1匹まで早く亡くなってしまうことがある」ということ……。
亡くなった子と年齢が近いケースもありますが、そうではない場合も少なくありません。
まるで後を追うように亡くなったペットちゃん。そんな話を耳にするたびに、私は「残されたペットちゃんも悲しんだから?」「飼い主さんの悲しみを感じ取ったの?」など、さまざまなことを考えてしまいます。
今回は、ペットちゃんの「後追い」や、残されたペットちゃんへのケアについて考えます。
ペットちゃんは、他のペットちゃんの死を理解できる?
ペットちゃんが、他のペットちゃんの後を追うように亡くなったケースは決して少なくありません。
ペット火葬業を通してたくさんのペットちゃんを見送ってきた私としては、残されたペットちゃんは「仲間に訪れた死」を理解しているとしか思えません……。
あるデータによると、同居しているペットちゃんが他界したときに、残されたペットちゃんの75%に「何かしら」の変化がみられたそうです。
モイラ・アンダーソンによる『ペットロスの心理学』によると、仲間を失ったペットちゃんにあらわれる反応として、たとえば、
・少しだけ気にするが基本的に目立つ変化はなし
・以前よりも飼い主の愛情を求める
・以前よりも飼い主の愛情を求めなくなる
・人間や他のペットちゃんとの触れ合いを拒否する
・寝ている時間が長くなる
・寝ている時間が短くなる
・今まで寝床にしていた場所を避ける
・トイレの回数が増える
・食欲がなくなる
・家中を歩き回る
・叫ぶように鳴く
・死んだ仲間を探すような行動をする
・死んだ仲間が大好きだった場所に居座る
・死んだ仲間が大好きだった場所を避ける
・身を隠す
・留守番を嫌がる
・うつを発症する
……などがあるとされています。
ペットちゃんによって性格が異なるのと同じように、仲間を亡くしたときの行動も軽度~重度までさまざまです。特に、旅立ったペットちゃんとの仲が深いほど、心の振れ幅は大きなものになるでしょう。
程度の差こそあれ、仲間の死によって心の中に「なにか」が訪れるのは、人間もペットちゃんもそう変わらないといえます。
犬同士・猫同士はもちろん、「ハムスターの死を犬が悼んだ」など、一緒に暮らした仲間として種族を超えた思いを持つことも珍しくありません。
仲間を亡くしたペットに、飼い主はどう対応すればいい?
家族同然に過ごしたペットちゃんの死……。
悲しみに打ちひしがれているのは、残されたペットちゃんはもちろん、飼い主さんも同じでしょう。
心にダメージを負った、ペットちゃんと飼い主さん。どちらも「助けてくれ」と悲鳴を上げています……。
しかし、残されたペットちゃんがいるなら、飼い主さんはぜひその子のケアを優先してあげてください。
『ペットロスの心理学』によると、残されたペットちゃんをケアすることが自分たちのペットロス回復につながる、とされています。まずはペットちゃんの状態に注意して、「大丈夫だよ、私たちがいるからね」といつでも寄り添ってあげてください。
一例ですが、仲間を亡くしたペットちゃんへの対応を紹介します。
一緒に遊ぶ
仲間は先に旅立ちましたが、飼い主さんのあたたかさは変わりません。
ぜひ、残されたペットちゃんと思いきり遊んであげてください。
気分転換になりますし、ペットちゃんも楽しみを見出すことで「死は悲しいけれど、それだけが自分のすべてではない」と察してくれるでしょう。
散歩に行く
外へ行けるような状態なら、いつも通り散歩に連れ出してあげましょう。
死という非日常は心に荒波を立てますが、そんな中でも「いつも通り」があることはペットちゃんにとって大きな安心になるはずです。
いつものルートも良いですが、少し遠い公園や普段行かない散歩道などで思う存分に散策させてあげるのも良いですね。
新しいおもちゃやおやつをあげる
好奇心旺盛なペットちゃんには、興味を持つようなものを渡してみましょう。
新しいおもちゃやおやつは、きっと喜ぶはずです。
悲しみが完全に消えるわけではなくても、心に新しい風を吹き込んであげるだけで、だいぶ気持ちが落ち着いてくるのではないでしょうか。
旅行に連れていく
最近では、「ペット可」のホテルが増えてきています。
飼い主さんの気分転換も兼ねて、残されたペットちゃんと旅行に繰り出すのはいかがですか?
いつもと違う土地、いつもと違うにおい。
ペットちゃんの心にも飼い主さんの心にも長く残る、すてきな旅行ができたら良いですね。
新しいペットを迎える
アイペット損害保険株式会社がおこなったアンケート調査によると、ペットロス(仲間ロス)回復のきっかけとしてもっとも挙げられたのが「新しいペットを迎える」だそうです。
ただ、新しいペットちゃんを迎える際は、家族との話し合いが欠かせません。
死別のダメージは、誰の心にも深く残ります。その傷は簡単に癒えるものではないでしょう。特に、「残されたペットの行動がおかしい」「元気がないようだ」「気持ちの整理ができない」「家族の一人から反対されている」など、少しでもNOサインがあるようなら、そのサインを尊重することをおすすめします。
「残されたペットちゃんのために、新しい子を……」というのも、反対にストレスを増幅することがあるので注意が必要です。残されたペットちゃんにとっては、「今とても心が疲れているんだ。新しい子と仲良くできる気分じゃない」とさらに塞ぎ込む結果になるかもしれませんから……。
もし、残されたペットちゃんの体調も良く、ご家族の理解も得られているなら、皆で新しい子を迎える準備をして良いかもしれませんね。ペットショップや保護施設など、残されたペットちゃんも同行して「候補」選びをしましょう。
人間にもペットちゃんにも訪れる、ペットロス(仲間ロス)。もしかすると、気持ちが整理できるまでに長い時間がかかるかもしれません。半年でも一年でも、家族全員の気持ちがある程度落ち着いて、全員の理解を得られるまでは、今のままで。
急がずあせらず、「そのとき」までいつもの日常を丁寧につむいでいきましょう。
心に傷を負ったペットちゃんのために
ペットちゃんは、仲間の死を理解します。
そして、死を悼み、悲しみます。
もしペットちゃんが「仲間ロス」から立ち直れないでいるようなら、ぜひ、亡くなったペットちゃんとの思い出話をしてあげてください。
「寂しいよ」「会いたいよね」など涙ながらに語ってしまうと、仲間ロスがますます悪化しかねないので要注意。
「あのときは楽しかったね」「幸せだったね」など、やわらかな表情で語れば、ペットちゃんにもそれがポジティブに伝わるでしょう。
「飼い主さんも悲しいはず。でもそれを乗り越えて今は笑顔になっている。ぼくもいつまでもクヨクヨしていられないな……」と、少しずつ気持ちが回復していくはずです。
旅立ったペットちゃんが行き着く、虹の橋。
しかし残された者がずっと涙を流していると、虹の橋は洪水になって渡れないのだそうです。
死別したペットちゃんのためにも、残されたペットちゃんのためにも、「できること」のすべては飼い主さんに掛かっています。見送るのはとても悲しいことですが、ある程度時間が過ぎたら、どうか涙を拭いてください。
「私たちは大丈夫。だから、安心して虹の橋を渡っておいで」
あなたの想いは、きっとあの子へ届くでしょう。
まとめ
ペットちゃんは、仲間の死を自分なりに理解します。そして、ペットちゃんによっては「仲間ロス」になることもあります。仲間が亡くなって後を追うように旅立つことがあるのは、精神的な原因が大きいのでしょう。
飼い主さんもまだ心にダメージを負った状態だと思いますが、残されたペットちゃんまで亡くさないよう、しっかりとケアしてあげてください。
飼い主さん、そして今そばにいるペットちゃんたち。「こっちのことは大丈夫よ」と空へ向かって笑顔で手を振れたなら、きっとあの子も安心して虹の橋を渡れるでしょう。